天然乾燥材(自然乾燥材)

 森は人に心地よい。
「森林浴」という言葉があります。森の中に入ると、不思議とさわやかな気持ちになります。小川の生み出すマイナスイオン効果や、木々が発するフィトンチッドと呼ばれる物質が人に働きかけると言われています。

もう一つ大切な事は、木々が光合成により、二酸化炭素を吸収し酸素を放出しているからでしょう。森は人が「呼吸する」という生命活動の原点を担っているのです。


 ゆっくり乾燥は地球にもやさしい。

天然乾燥は、化石エネルギーを使用せず、太陽と風をつかって、ゆっくりと乾燥させる方法です。

木が本来の持つ温もりや香りといった「森のエッセンス」を引き出すのが天然乾燥です。

森を住宅に再現するには、天然乾燥材が最適だと考えています。


二酸化炭素を吸収してくれる木。

木々は光合成により吸収した二酸化炭素を自らの体内に取り込み固定化する「炭酸同化作用」を行っています。地球温暖化を引き起こす二酸化炭素の減少には、木や森といった植物の存在が大きな役割を担っています。


色つやの美しい天然乾燥
 天然乾燥材は「ねばり」があるから人工乾燥材よりも強い。

なぜ天然乾燥材の方が強いのでしょう? 木には俗に「油分」と言われる成分があり、木材内に貯えられています。製材すると油分の強い木は、触るとまるでロウを塗ったかのようにネットリしています。

この油分が、木材を曲げた時に、折れずにギリギリまで曲がって耐えてくれる「ねばり強さ」の元になっているのです。また、この成分が木の色つやの良さなど、木本来の美しさを引き出す成分でもあり、木特有の「香り」成分なのです。

ところが、人工乾燥すると、水分と一緒にこの「油分」も木から出てしまいます。結果、ねばりの無い、脆い木になってしまい、また色つやも悪く、香りのしない材が出来上がってしまうのです。


環境にも配慮された木材であること。

現在、殆どの木材は効率を優先して、人工乾燥されています。二酸化炭素削減目標としてマイナス6%が提示されましたが、現実は逆に5%増えてしまっているのです。

天然乾燥は手間と時間のかかる作業です。しかし、どちらの乾燥方法が私たちの未来へと繋がって行くのでしょう。環境にも配慮された木材であることが、これからは求められると感じています。

■ 人工乾燥
 ■ 天然乾燥

  
化粧表し材には天然乾燥材が最適。

構造材をそのまま室内に見せる施工が増えています。

天然乾燥材は、表面に若干の小割れは入りますが、色つやの良さや、金具を使用しない継ぎ手の美しい納まり、強度確保などの面において最適だと感じます。

また、天然乾燥材を使用しなければ、木の香りのする家造りは実現できないでしょう。


表面に小割れが入ります。

天然乾燥材は、表面の中心部に必ず小割れが入ります。これは木材が乾燥する過程で、外側と中心部の水分量の違いや、木の繊維密度の違いによって、起こる現象です。こうした小割れを、木が裂けてばらばらになってしまうのではないか?とご心配なさるケースがあります。でも、ご安心下さい。昔からの木造建造物には殆ど全てこうした小割れがありますが、100年以上(法隆寺は1300年)も十分に耐えているのです。また、実際に荷重をかけて試験したデータでも、強度は大丈夫だという結果が出ています。

■ 静岡県林業試験場データ
 

水分量(含水率)のばらつき。

天然乾燥では、人工乾燥のように一定値まで均一に水分量を落す事が出来ません。木、一本一本の個体差や気象条件などにより、どうしてもばらつきが出来てしまいます。

私どもでは、これまでの経験から、構造材で含水率30%程度、内装材で20%以下を基準に考えています。


施工技術の大切さ。

天然乾燥を扱うにあたって、一般的な建材と同じ感覚で施工してしまうと、うまく行かない場合があります。適所適材を心がけたり、収縮による木の動きを考慮した施工など、木材扱う技術が問われます。


 天然乾燥材を選ぶ基準を明確に。

天然乾燥材と人工乾燥材には、それぞれの特性があります。

ご自身のライフスタイルに合った木材選びをする事も、家造りの上で大切だと感じています。


自然との共生 「香りのする家造り」を目指して。
森の恵みを謙虚に受け取る事を忘れてはいけなと思います。「森は人に心地よい」。森を住宅に再現出来れば、人にとって快適な住空間が作り出せるはずです。

その一つが「香り」ではないでしょうか。どこかホッとする空間には、木の香りが満ちているはずです。そのためには何をするのが大切なのでしょう。そして、何をしてはいけないのでしょう?


大切なのは、木を出来るだけ永く、木のままで使うこと。

二酸化炭素を貯め込んでくれた木を、燃やしたり、腐らせたりすると、再び大気中へ二酸化炭素を戻してしまいます。

木を木材として住宅や家具に使用し、出来るだけ永く廃材とならないよう利用すること。都市や街に木材をふんだんに使用した「第二の森」を造り上げる事が、これからの私たちの未来に大切な作業なのです。


ゆっくりと乾燥させること。

人間だけがどうしてこんなに忙しく生きているのでしょう。自然はもっと、ゆっくりで、のんびりで、でも確実に一歩一歩進んでいます。スローライフ。ちょっとのんびりしてみる。あんまり急がない。たまには見方を変えてみる。効率ばかりを追わない。キャンプのように不便さを楽しみに変える。

天然乾燥は手間も時間もかかります。効率はよくありません。でも、その分、人に何かプラスを与えてくれるはずです。ゆっくりとした分、森に近づけるのではないでしょうか。


天然乾燥材
人工乾燥材

(高温乾燥)

木材本来の色・つやが残る。
色・つや
黒っぽくなる。
木材本来の香りがある。
香り
香りが少なくなる。焦げ臭くなる。
表面割れが生じる。若干の収縮がある。
狂い
狂いは起こりにくい。内部割れの可能性がある。
平衡含水率(20%前後)以下にはならない。
含水率
任意の含水率に出来る。
太陽と風を利用するため、環境に対する影響が少ない。
環境負荷
化石燃料の大量消費とCO2放出。
葉枯らし乾燥を含め1年以上。
乾燥時間
1〜2週間程度。
ねばりがあり、曲げに強い。
強度
表面に強度がある。内部割れを起こしていると危険。
取り扱う製材所は少ない。
製材所
流通の主流となっている。
大工さんの手刻み
加工・施行
プレカットで金物工法
木の構造材を見せた「木の家」
主な用途
木を見せないクロス張りの住宅。

copyright sugiyamaseizaisyo all right reserved